第6信（番号が違っているかも知れぬ）
今、居る処は、かしわ（鶏肉）があり、豚があり、卵があり、食うに事欠かぬ処と思っていた処、少し前に、十数人程が食当たりした。自分もその一人だが、さて、寝ついてみると食うものはない。飲み水さえ、薬くさくて駄目。バナナだけで、リンゴなぞはない。案外不自由だ。
こんな時には、皆で話し合ったのだが、日本米に日本茶、なら漬けででも食いたいなといったことです。けれども此の地方は湿気が多く、且、水が悪いので、駄目です。
此の病気は約1週間程で全快しましたが、丁度、子供のエキリ（疫痢）の様なもので、仏印での食あたりは、相当コワイモノだそうです。
隣の中隊の方で入隊前五日に、エキリで子供を二人死なして来られた方がありますが、同情にたえません。家の方も、十分用心して下さい。
こちらは、現在では元気。安心あれ。又、筆を改めて書きます。（今度から又、宛名が表記のように変わりました。）（居る処は変わりません）
着信月日不詳
所属部隊の表記は、個人名を並べていたものから、一部に数字が使われ、個人名の数が少なくなっている。