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戦地からの便り 小田桐正一  019 椰子の実

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宛名 通信文

第2信
  椰子の実を喰うたら、丁度、有馬の炭酸泉に少し砂糖を入れた様な味だ。なれると甘いものだ。而も、マラリヤの予防になるという話しです。
  二三日前に、インデアンの踊りを見たが、太鼓や鐘を叩いて、お経の様な節の唄を唄って、しきりに尻を振っている丈で、何の意味だかサッパリ分らない。
  話は、去年のことに遡るが、李香蘭の"支那の夜"のフランス版の映画を見、その后、日劇ダンシングチーム(東宝と称せり)の慰問演劇を見た。
  シンガポールも陥落した。我々も、北か南か分からぬが、東亜共栄圏を一周することでしょう。

1942/04/22受信

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